長年、帰化申請のお手伝いをさせていただいてきましたが、今回のニュースには「とうとう来たか」という印象があります。
政府は、日本国籍を取得するための「帰化」の要件について 厳格化を検討 しています。
とくに注目されているのが、「5年以上の居住」 を 延長する案 が検討対象となっており、2026年1月にまとめられる「外国人政策の基本方針」に向けて具体策が詰められています。
ここでは、今回の内容のポイントや背景、今後の見通し、そして帰化を考える方が「今なにをすべきか」を、できるだけわかりやすく整理しました。
居住期間要件「5年以上」の延長が検討されている理由とは?
日本で帰化するためには、主に次の要件を満たす必要があります(普通帰化)。
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引き続き5年以上日本に住所を有すること。
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18歳以上で本国法によって行為能力を有すること。
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素行が善良であること。
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自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。
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国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。
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日本政府を暴力で破壊しようとする思想のないこと。
上記に加え、小学3年生程度の日本語の読み書きができることが必要とされています。
この中で政府が特に注目しているのが 「居住要件」 です。
なぜ今「厳格化」を進めるのか?
1. 永住許可との“逆転現象”の解消
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帰化:原則居住期間5年以上
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永住許可:原則居住期間10年以上
日本維新の会は9月に公表した外国人政策の提言で「より重い法的地位である国籍の方が、永住許可よりも取得要件が緩い逆転現象が生じている」と指摘し、帰化の居住要件を永住許可と同等以上に厳格化することを提起しました。
2. 過去の政権から続く懸案事項
石破政権時代から、「永住許可との整合性を確保できるように、速やかに検討する」との方針が示されており、高市政権で「厳格化の検討」という強めた表現を使うようになりました。
3. 与党間での連立合意
自民党と維新が10月に交わした連立合意書は「外国人の受け入れに関する数値目標や基本方針を明記した『人口戦略』を26年度中に策定する」と明記しました。
帰化の要件は“緩い”とは言えない側面も
一方で、出入国在留管理庁(入管)は、「帰化には居住要件以外にも多くの条件がある」と強調しています。
たとえば「素行が善良」「生計を営める」「憲法順守」といった要件のほか、日常生活に支障のない日本語能力が求められます。
永住許可の申請時に必要な理由書はパソコンによる作成が認められていますが、帰化申請に必要な動機書は日本語で自筆で書かなければなりません。
居住要件以外の手続きや難易度を含めると、帰化の要件が永住許可よりも緩いとは一概に言えないとの見解もあります。
実務の中で感じていること
実際に、帰化申請や永住申請のご依頼を日々いただいている立場として強く感じるのは、帰化申請は、提出書類が多く、そして“その人の人生すべて”を見られる審査である という点です。
帰化では、
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身分関係(家族・親族)
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過去の在留歴
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仕事の状況
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生活の実態
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納税・年金・保険の履歴
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家族構成の変化
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日本語力
など、あらゆる情報が「事細かく」確認されます。
言ってしまえば、プライベートのほぼすべてが法務局に丁寧に審査される手続き です。
その分、提出書類も多く、審査期間も長くかかります。
私自身、帰化申請のお客様とは9か月〜1年ほど、長い方では1年以上のお付き合いになります。
「転職しました」
「結婚しました」
「交通違反をしてしまいました」
など、申請が進む中でいろいろな出来事が起こるので、一緒にひとつずつ整理しながら進めていくイメージです。
だからこそ、「永住より帰化の方が簡単」という単純な話では決してありません。
居住年数だけを比べて判断できるようなものではない、というのが実務の実感です。
【まとめ】制度が変わる前の「今」こそ、冷静に準備したい時期です
今回の「居住要件延長案」は、帰化申請のタイミングを左右する重大なニュース です。
① 居住年数のカウントを正確に確認
「今何年住んでいるのか」
「途中でビザが切れた期間はないか」
などを早めに整理しておく必要があります。
② 納税・年金・健康保険の履歴を確認
厳格化に伴い、税・社会保険はより厳しくチェックされます。
納付期限内に納付することが重要です。
③ 必要書類について把握する
過去の住所歴・職歴など、申請に必要な情報は膨大です。
特に、身分関係の書類(出生証明書、婚姻証明書、家族関係証明書など)は、本国から取り寄せる必要があります(韓国の場合は日本で取得可)。
取寄せるのに時間がかかる場合もありますので、早めに手配することがポイントです。
また、本国からの書類には翻訳文を添付する必要があります。
④ 制度改正前に申請できるか
居住要件が延長される前に申請できるかを検討する必要があります。
もちろん、安易に帰化申請を考えることは危険です。
永住か帰化か、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、ご自身の人生設計に合った選択をすることが大切です。
制度が正式に決まる前に、上記を確認しておくことで、後悔のない申請に臨むことができます。
今回の居住要件の見直しは、帰化申請のタイミングに大きく影響する可能性があります。
制度改正後に「もっと早く準備しておけばよかった…」ということが起きないよう、今のうちから確実にできることを進めておくことが大切です。
帰化申請は複雑で時間がかかりますが、正しく進めれば必ず道は開けます。
分からないことや不安なことがあれば、どうぞ気軽にお問い合わせください。
帰化.jpでは、これからも、皆さまのお役に立てるような情報を、できるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。










